フィジカルトレーニング不要論をたまに見聞きしますが、それは体幹と運動連鎖のメカニズムを理解していれば間違いであることに気づきます。体幹と運動連鎖はパフォーマンス向上における科学的事実を無視した結果と言えるでしょう。この事実を理解し、国内スポーツレベルの向上には長期的視野をもってキッズ・ジュニアアスリートの段階からフィジカル強化を図るべきです。

フィジカルトレーニングの重要性を唱えるハリル監督

現在のサッカー日本代表のハリル監督が常に取り上げる課題として「フィジカルの強さ」があります。海外の選手が体格で優り、パワーで優れている場合、パスを回して相手とのコンタクトを減らすという戦術を選択することは一理あると思います。また、セットプレーの精度を上げていくことも重要でしょう。

しかし、フィジカルトレーナーとしてハリル監督のメッセージを解釈するのであれば、ゴール付近でのシュートチャンスやディフェンスにおいては、相手と一対一のせめぎ合いを制するしか選択肢はなく、シュートチャンスにおいては、一瞬の身体のブレがシュートの精度を決定しまう可能性もあり、体幹を含めたフィジカルトレーニングが必須なわけです。

これは何もサッカーだけではありません。全てのスポーツに言えることですが、特に相手とのコンタクトが必須になってくるバスケットボール、ラグビー、、、、においては絶対と言って良いです。

チームの戦略を支えるフィジカルトレーニングの計画が無い、作れない

“I think soccer in the past always trained every player the same, and I’m totally convinced that you have to go the individual direction. Every athlete is different and in order to get the best out of each player you need to work individually” – Juergen Klinsmann, former head coach, German men’s national soccer team

以前のコラムで、アスリートにおける体幹の重要性について掲載しましたが、パフォーマンス向上だけでなく、怪我の予防も考えると体幹が非常に重要であることは皆さんもよく理解しています。

しかし、チームの戦略を支えるための科学的かつ具体的なフィジカルトレーニング計画が策定され、実行されているかというとあまりない。もちろん、やってはいますが、チーム全体で強化はしているものの、戦略的な課題の分析をもって正しいと言い切れるフィジカルトレーニングか?というと難しいのではないでしょうか?

残念ながら日本のプロスポーツのチームでさえ、このような状況が少なくありません。

ワールドカップで優勝したドイツのナショナルヘッドコーチは、各々の選手のベストを引き出すためには、過去のように同時にみんなでトレーニングするのではなく、個々の選手に合わせたトレーニングが必要であるということを明言しています。

このように、フィジカルトレーニングを個々のアスリートに任せず、国家として課題を認識すべきです。

10年単位、特にキッズ・ジュニア世代からの戦略的なフィジカルトレーニング環境構築が喫緊の課題

上記の通り、プロやエリートアスリートは個別にフィジカルトレーニングを適用すべきですが、真に大切なのは、その過程で長期的視野でフィジカルを強化していくということです。

大人になる前の過程、10年単位でフィジカルを計画的に強化していく環境構築こそが重要であり、これが日本のスポーツレベルを引き上げる上での戦略上の重要ポイントであると考えます。

特にプレゴールデンエイジと呼ばれる大体9歳以下ぐらいから、インディペンデントエイジと呼ばれる15、16歳以上に至る段階を大切にし、そこから大学の学生時代までの期間に筋力向上や運動連鎖などのストレングス系のトレーニングをスポーツスキルと同時に1セットで指導することが大切であると思います。

このポイントについては、CNC MAG内の以下の記事で詳しく触れていますのでご参考ください。

遠いようですが、東京オリンピックを見据えながら、10年単位で戦略を練り、この流れを具体的に作ることがハリル監督の言う「フィジカルの弱さ」を克服する一番の近道であるです。

フィジカルトレーニング不要論は体幹と四肢の運動連鎖を無視した結果

話を戻しますが、体幹は身体の重心とも呼ばれています。ここから四肢へ動作を連携させる役割があることを体幹はなぜ重要か?でも述べておりますが、体幹を鍛えることで、サッカー含めた全てのスポーツに必要な回旋や切り返しに重要なスタビリティー、バランス、パワー、スピードなどをスムーズな運動連鎖で産生し、パフォーマンス向上につながります。

世界では体幹トレーニングではなく、体幹と四肢の連動が重要視されていることも何度も述べていますが、このメカニズムを理解したならば、現状のフィジカルトレーニングに疑問を持たらざるを得ません。

また、たまにフィジカルトレーニングは不要という趣旨の論調を見聞きします。フィジカルよりも競技力そのもの、またはチーム戦術を重視しての考えかと思いますが、フィジカルトレーニングはそれらと比較、選択されるものではありません。フィジカルトレーニングは、競技力向上、ひいてはチーム戦術を支える要素の一つであり延長線上に位置するものです。また、上記の潮流は決定的事実であり、科学的な実証結果です。

フィジカルトレーニング不要論はこれらの運動連鎖を無視した結果であることを理解し、ジュニアアスリートにも直ぐに普及するべきだと思います。


Flag of Japan ” by Mj-birdOwn work. Licensed under CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons.

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