今回のAsk Expertsは、テニスを指導している方からのご質問に答えます。競技経験はあるものの、過去の自分の経験から複数の年代に同じトレーニングを行っているそう。怪我予防も考えながらより効果的なテニスのトレーニングを考えていきます。どのスポーツにも、年代に応じて適したトレーニングというものがあります。若年層では主に身体の基本的な能力に加え、神経系を発達させて運動神経そのものを向上させる。そして年齢を重ねるにつれてフィジカル面を強化していき、身に付けた筋力を効率よく使う為のファンクショナルトレーニング等が重要になってきます。

Question

“私は現在テニスの指導者をしています。
見ている年齢も年少の子供から高齢者のかたまで様々です。
その中で年齢に応じたトレーニングを取り組んでいきたいのですが、知識が浅いもので自分自身が学生のとき(15~20歳)に教わってきたトレーニングの知識しか持ち合わせていません。
教わった内容もプロのトレーナーではなくテニスのコーチに教わった知識です。
なのでそれが正しい知識なのかがわかりません。
このまま間違った知識でトレーニングを行ってそれが原因で怪我をしたり身体動作が悪くなるのは避けていきたく今回送らせていただきました。”

Answer from Expert

ご質問ありがとうございます!

内容を拝見させていただきましたが、残念ながら詳細が不明な点もありました。不明な点について、質問の背景を以下と仮定させていただきました。

今回はこの仮定をもとに回答していきます。

状況

  1. 年代別のテニストレーニングにおいて一律に同じ練習を提供している
  2. プロのトレーナーではなく自分の経験から練習メニュー

要望

  1. どの年代もテニスの競技力を向上するためのフィジカルトレーニングを知りたい(レクリエーション的な目的は除く)
  2. トレーニングを年代ごとに最適化させたい

回答する上での方向性

  1. テニスの競技特性にあわせたフィジカルトレーニングをどう考えるか?
  2. それにあったトレーニングは?
  3. 年代で考慮に入れるべきこと

それでは、以下具体的にご回答してきましょう。

テニスに関わらず、各スポーツで年代毎に適したトレーニングがある

テニスの競技特性に合わせたフィジカルの要素は数多くあります。筋持久力、瞬発力、敏捷性、ボディーコーディネーション力、バランス力、等々…。細かい部分まで掘り下げるとかなりの数の要素が挙げられます。

従って、今回は年代別のトレーニングの一例として、有名選手のトレーニングを分解していきましょう。

フェデラー選手のジュニア時代トレーニング

まずは、フェデラー選手の昔のトレーニングを見て頂きます。

<引用元:Youtube>

全ての能力を向上するのに必要な要素が網羅されているトレーニングプログラムです。この中からいくつか抜粋し、年代に合わせてご紹介していきます。

プレゴールデンエイジ(4歳~8歳)

テニスに関わらず、様々な運動を通して多様な動きをすることが競技力の向上に重要になる。様々な遊びの中に競技要素を含んだトレーニングをすることをおススメします。

30秒~43秒 一瞬の動き&ステップワークのトレーニング

(→普通の紐をズボンの腰部に挟んだ状態で行う。タグラグビーのような鬼ごっこ方式にする。等々)

1:22~ 反射神経&目の反応速度向上

(→少し変形させたピンポン玉を使う。等々)

 

ゴールデンエイジ(9歳~12歳)

様々な技術を習得しやすい絶好期。出来るだけ多くゲーム形式のトレーニングを行い、新しい技術の習得等をすると良いでしょう。フィジカル面では神経系、基本的な動作、スタミナを向上させるトレーニングが有効です。

1:00~1:11 反応/反射神経とそれに合わせた身体の動かし方

(→数字を書いてその数字の順に拾う。言われた番号だけを一瞬で判断して拾う。等々)

3:00~3:12 ボックスステップ

 

ポストゴールデンエイジ(13歳~)

競技の特性や目的に合わせたトレーニングが必要。負荷をかけた状態、もしくは負荷をかけた後に実践の動きを取り入れたトレーニングを行うことが効果的。

1:12~1:20 ステップワークと負荷を加えたスイング

1:30~2:20 リバウンダーとスロー 高いとこからのサーブ からのボレー

ちなみに、シャラポワ選手も同じようなトレーニングを行っています。

<引用元:Youtube>

社会人~

成人になると、技術習得などのスピードが昔に比べて遅くなりますが、フィジカル面は変わらず向上します。普段からテニスを行って人が更なる競技力向上を試みるには、全身の筋持久力とファンクショナルトレーニングがおススメです。

全身のファンクショナルトレーニング

<引用元:Youtube>


久々に始める方々は、トレーニングよりもまずアップやストレッチをしっかり行うことが最優先事項になります。

ダイナミックウォームアップ

<引用元:Youtube>
(身体を温め、次に少し負荷をかけて動かすことで各関節周りの筋肉を刺激する。)

何よりも怪我の予防が大切

また、全ての年代を通して怪我の予防は何よりも大事になります。肘の怪我はどの年齢層でも最も多く、次に若年層では腰、シニア層では手首の怪我が多くなります。ほとんどの場合、柔軟性の欠如と姿勢悪化(背筋・腹筋の欠如)が怪我を招くので、柔軟性とベースの身体造りはどの年代でも必要不可欠です。

色々挙げましたが、この年代ではこのトレーニングが一番!といった決まりはありません。一人一人身体の状態は異なります。指導者が選手をしっかり観察し、適切な知識と創意工夫をもってトレーニングプログラムを組むことが大切になってきます。

競技経験者とともに科学的なフィジカルトレーニングの知識を獲得しよう

また、余談となりますが、アスリートを専門とするフィジカルトレーナーとして今回は大変嬉しい質問でした。なぜなら、日本の部活動やスポーツスクールには競技経験者はいますが、フィジカルのプロがいないというケースも多いのです。

今回の質問は先進的かつ積極的なご質問だと思います。しかし、実はこのような疑問させ持ち合わせていないコーチや監督が多いのが実態ではないでしょうか?その練習メニューは最新のスポーツ科学を鑑みた時に、正しいのか?これは競技経験者だけでは回答できないのです。

今回、質問いただいた方は、過去の経験からコーチを行っていますが、自分の生徒さんたちのことを真剣に考え、責任を感じてのことだったと思います。私たちプロのフィジカルトレーナーはこうした競技出身の方々へフィジカルトレーニングを伝えていくこともまた使命だと強く感じました。


Cover photo by Rob Young – originally posted to Flickr as Roger Federer, CC 表示 2.0

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